【令和8年4月〜】技術・人文知識・国際業務に「言語能力要件」追加
留学生・企業・技人国更新への影響をわかりやすく解説
1.今回の制度変更の概要
令和8年4月15日以降、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる「技人国」)について、一部の申請で「言語能力」に関する要件・確認が追加されます。
特に影響が大きいのは、次のようなケースです。
- 企業カテゴリー3・4に該当する会社
- 言語能力を用いて対人業務に従事する外国人を採用・継続雇用する場合
ここでいう「言語能力を用いて対人業務」とは、例えば次のようなイメージです。
- 通訳・翻訳
- 語学教師
- 外国人顧客対応の営業・接客・カスタマーサポート
- 海外とのやり取りが中心となる国際業務 など
これらの業務については、一定水準以上の言語能力(CEFR B2相当)が求められる運用となります。
2.求められる言語能力の水準(CEFR B2相当)
出入国在留管理庁の公表では、対人業務で言語能力を用いる場合、CEFR B2相当の言語能力が目安とされています。
日本語については、概ね次のような資格・経歴が「B2相当」として扱われます。
- 日本語能力試験(JLPT)N2以上
- BJTビジネス日本語能力テスト 400点以上
- 日本での在留期間が20年以上
- 日本の大学・大学院・短大・高専・専修学校(専門課程)卒業
- 日本の義務教育+高校を修了している など
※実際の運用では、個別の事情や提出資料の組み合わせにより判断されます。
3.どの申請に影響するのか(認定・変更・更新)
今回の言語能力要件は、新規の在留資格認定だけでなく、在留資格変更・在留期間更新にも関係する可能性があります。
- 在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ)
- 在留資格変更許可申請(例:留学→技人国)
- 在留期間更新許可申請(すでに技人国で働いている方の更新)
特に、企業カテゴリー3・4で、言語を使う対人業務に従事するケースでは、更新時にも言語能力の確認が行われることが想定されます。
4.留学生への影響(留学→技人国)
4-1.語学系・国際業務系を目指す留学生は「N2」が実質必須に近い
留学生が日本で就職し、「技人国」へ在留資格変更する場合、 語学を武器にした仕事(通訳、語学教師、外国人対応の営業・接客など)を希望する方は、N2レベルが事実上の前提になっていきます。
- 日本語学校から専門学校・大学へ進学した方
- 専門学校(専門士・高度専門士)を卒業して就職する方
いずれも、「学歴」+「言語能力」の両方が揃っているかが、これまで以上に重要になります。
4-2.N2未取得のまま内定→在留変更できないリスク
企業が日本語能力を十分に確認しないまま内定を出し、 いざ「留学→技人国」の在留資格変更を申請したところ、
- 言語能力要件を満たさない
- 対人業務の内容に比べて日本語力が不足していると判断される
といった理由で、不許可となるリスクが高まります。
「内定が出たのに在留資格が取れない」という事態を避けるためにも、 留学生の方は、できるだけ早い段階からN2取得を目標にした学習計画を立てておくことが大切です。
5.すでに技人国で働いている人(更新・転職)の注意点
5-1.更新時にも言語能力が問われる可能性
すでに技人国で働いている方でも、次のような場合には注意が必要です。
- 企業カテゴリー3・4に該当する会社で働いている
- 外国人顧客対応の営業・接客・サポートなど、対人業務が中心
- 転職後、初めての在留期間更新を迎える
更新申請の際に、業務内容と言語能力のバランスが改めてチェックされる可能性があります。
5-2.転職時は「新しい業務内容」と「日本語力」の整合性が重要
転職により、 「これまでよりも日本語を使う対人業務の比重が高くなる」 といったケースでは、在留資格の更新・変更の際に、より厳格に見られることが想定されます。
- 職務内容説明書
- 雇用契約書
- 会社案内・ホームページの内容
などと、実際の日本語能力(N2の有無など)との整合性を意識しておくことが大切です。
6.企業側への影響(採用・人事担当者向け)
6-1.外国人採用のハードルが上がる部分
企業カテゴリー3・4の会社が、 言語能力を用いる対人業務で外国人を採用する場合、
- 採用前に、日本語能力(または他言語のB2相当)を確認する必要性が高まる
- 在留資格申請時に、言語能力を裏付ける資料の提出が求められる可能性がある
など、採用プロセスの段階から在留資格を意識した運用が求められます。
6-2.「語学を使う業務」の線引きが曖昧になりやすい
実務上、企業が悩みやすいポイントが、
「うちの業務は、どこまでが『言語能力を用いる対人業務』に当たるのか?」
という線引きです。
- 一部の業務で外国人顧客対応がある
- 社内の日本人とのコミュニケーションが中心だが、時々通訳的な役割もある
- メールやチャットでの対応が多く、対面・電話は少ない
こうしたグレーゾーンのケースでは、在留資格の運用に詳しい専門家に事前相談することで、 採用後の「想定外の不許可」を防ぎやすくなります。
6-3.内定後に「在留資格が取れない」を防ぐために
企業としては、次のような点を事前に確認しておくと安心です。
- 応募時点での日本語能力(N2の有無、スコア、会話レベル)
- 学歴(日本の学校卒業かどうか、専攻内容)
- 実際に任せる業務内容が、どの程度「対人業務」なのか
- 在留資格のカテゴリー(1〜4)のどこに当たるか
採用前の段階で、行政書士など専門家に求人内容・職務内容を見てもらうことで、 「採用したのに在留資格が取れない」というリスクを大きく減らすことができます。
7.行政書士の視点から見た「注意ポイント」
行政書士としては、今回の言語能力要件追加により、 次のような点の確認がより重要になると考えています。
- 企業カテゴリー3・4の案件では、言語能力証明の有無を必ずチェックすること
- 職務内容説明書と、実際の業務(対人業務の割合)の整合性
- 派遣・請負など、就労先が複数にまたがるケースでのリスク管理
- 留学生の「留学→技人国」変更の際、N2未取得者の扱い
特に、派遣形態での就労は、
- 就労先での業務内容
- 日本語を使う場面の多さ
- 指揮命令系統
など、在留資格との関係で慎重な検討が必要です。
8.よくある質問(Q&A)
Q1.日本語能力試験N3でも申請できますか?
A.絶対に不許可というわけではありませんが、対人業務が中心の場合、N3では厳しい場面が増えると考えられます。業務内容や他の経歴との組み合わせによって判断されます。
Q2.英語など他の言語でB2レベルがあればよいですか?
A.業務で主に使用する言語が英語であり、日本語は限定的な場合など、ケースによっては他言語のB2相当が評価される可能性もあります。ただし、日本国内での就労である以上、日本語能力も一定程度求められる場面が多いと考えられます。
Q3.すでに長年日本で働いている場合でも、改めて資格が必要ですか?
A.在留歴や学歴、日本での生活状況などから、形式的な資格がなくても「B2相当」と判断される場合もあります。個別の事情によりますので、申請前に専門家へ相談されることをおすすめします。
9.まとめ:早めの準備が、将来の選択肢を広げる
今回の「言語能力要件」の追加は、
- 留学生の就職・在留資格変更
- すでに技人国で働いている方の更新・転職
- 外国人を採用する企業の人事・採用戦略
のすべてに関わる、大きな運用変更です。
留学生の方へ:
- できるだけ早い段階から、日本語能力試験N2の取得を目標にする
- 将来やりたい仕事が「対人業務」かどうかを意識して進路を考える
企業のご担当者さまへ:
- 採用前に、日本語能力・学歴・業務内容を在留資格の観点からチェックする
- 内定後に在留資格が取れない事態を防ぐため、早めに専門家へ相談する
制度や運用は、今後も見直される可能性があります。 最新の情報を踏まえつつ、「せっかくのご縁が在留資格で途切れてしまわないように」、 一件一件ていねいにサポートしていきたいと考えています。

